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ダイヤモンド
◆ ◆ ◆
クリスマスイブの夜に恋人とデートを楽しむというのは、限られた人間の娯楽だと思う。一般的に見れば、年末年始を控えたこの時期、繁忙期でなくとも定時きっかりに上がれる社会人はそう多くないだろう。
例に漏れず、鷹瑛もまたがっつり残業につかまって、ようやく空いた短い時間にコンビニで夕食を調達している。カロリーを摂取する目的だけで選んだ幕の内弁当がレジ袋の中でがさりと味気ない音を立てた。
仕事上がりにおしゃれなディナーでも……なんてほど遠い。それは職場を同じくする雪乃も承知のところで、彼氏としては言い訳する手間も省けるというものだ。
それにしたってクリスマスデートの「ク」の字も話題に上らないのはいささか寂しすぎやしないだろうか。
まったく、雪乃は遠慮しすぎる……。
鷹瑛はため息をついた。
そもそも雪乃は鷹瑛とのデートを望んでいないのでは? そんな不安もないわけではなかった。けれども、このところの彼女の態度を総合的に考えると、どうもそれは違うような気がしていた。
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