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あれはもう三十年前のこと、私は海上自衛隊に入隊して一年が過ぎ一等海士になんていました。
護衛艦に乗り組んだ私は一分隊魚雷員になり、厳しい訓練に明け暮れていた。そんな時艦が練習艦隊に配属され、練習護衛艦「かとり」と一緒に練習幹部を乗せ、遠洋航海に出る事になりました。
コースはハワイ、フィージー、オーストラリア、フィリピン、インド等を約半年間で廻る太平洋一周コースでした。
先ずは横須賀からハワイへと二週間かけて訓練をしながら航海します。
しかし異変は出港の時から始まっていました、出港時艦は曳船からの舫いで引っ張られて岸壁を離れますが、この舫いが切れてしまったのです。幸いけが人は出ませんでしたが舫いがちぎれるのは初めて見ました、勿論その後もありません。
その後も小さなトラブルが続きました、エンジン、レーダーの不調、艦内マイクからの異音。
この艦内スピーカーからのガリガリ異音が私達を苛立てました。
そして出港して一週間が過ぎた時、班長からあることを聞かれました。
「お前たちの中で戦争で身内を亡くしてるやつは居るか?」
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