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水平線には靄が掛かり、冬の北海道なら水平線の向こうまで見ることができるのですが、この時は水平線まで約一万メートルとして約八千メートルぐらいしか見通すことができませんでした。
「白灯1、右二十度、水平線、左へ進む」
右見張りから報告を受けました、太平洋で船に遭遇するのは珍しい事です。私は当直士官にそのまま報告します。
すると当直士官が手持ちの双眼鏡で確認、羅針盤を見て。
「CICへ、シー方位二百三十度の目標側的始め」
私はCICを呼び出して伝えます。
当然、その目標、アルファ目標と呼称する。と帰って来ると思いましたが……。
「二百三十度ですか? その方向には何もありませんが……」と言ってきた。
これに怒った右見張りは。
「何もないだと! 確り見ろ!!」
「お、お前こそ! 星でも見間違えたんだろ!」
と、言い合いを始めてしまった。
そうこうしているうちに白灯(航海灯)が艦首付近に来たので艦橋からも見ることができました。
なるほど、船体はカスミが掛かって見えませんが水平線上に大型の船舶の灯りが見えます。
その時「空母だ……」右見張りが呟いた。
右見張りには固定式の大きな双眼鏡が設置されています。きっと一瞬船体、いや艦体が見えたのでしょう。問い質しましたがうやむやにされてしまいました。
その白頭は艦首付近まで来ると、フワッと浮き上がるように消えてしまいました。
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