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SUSPICOUS MIND
「おい、イビー、ジョニーを何とかしろよ。朝っぱらから、やかましくて、寝られやしねえ」
「兄さま、もうお昼よ」
城の北側の岩場には毎日、ジョニーの実験の音が鳴り響いていた。雷が鳴る一時間も前から遠い前ぶれを聞き取れるウォルフは、爆音の度に、狂ったように吠えていた。
「可愛そうなイビー叔母さま」のそばにいておあげなさい、と母のアリスに固く言い含められている癖に、ジョニーは、叔父や叔母には顔もろくに見せずに、一日中外にいた。甥はここへ来てから、一度もアズマの発作を起さなかった。
「ジョニーの秀才は、まったくアリスの遺伝だね。五歳の時、積木で三角関数を理解したんだからね。俺の息子は三人とも親父似で、勉強はさっぱりだもんな」
「でも、みんないい子よ。ダイナ義姉さんは、上手に育ててるわ」
「ああ、ダイナはいい女房だ。俺には高尚過ぎる」
夫を亡くしてから、私の唯一の話相手は、この出来損ないの兄だけだった。アイク兄は別に意識していたわけではないのに、私の神経に障るような事は何も言わなかった。
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