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浜辺には、デッキチェアで寝転んでいるお客たちのパラソルがいくつか見えた。
私は、父とテーブルの間に割り込んで、分厚いご本を覗き込んだ。ページには長い、難しい単語がずらりと並んでいるだけだった。象や子猫や、虎でバタを拵えて食べた黒い男の子なぞの、どうやらアルファベットが読めるようになったばかりの子供の目を惹く魅惑的な単語は、大きなページのどこにもなかった。
「父さま。これは何のご本?」
父は表紙を見せた。私には読めなかった。父は別に説明もしなかった。
父は胸の葉巻を取りだして薫りを嗅いだ。しゅっと音がして、マッチの火がついた。私はこの硫黄の匂いが好きだった。
父はクリスタルの鈴を振り、従僕に言いつけて、ずっしりと重い写真集を持って来させた。
父の白い繊細い指が繰るページに、アフリカのサバンナの、広大な草原に沈む夕日や、砂漠の井戸や、赤い縞模様の毒蛇が次々に現れた。
写真の合間に、アンソニー・マイケル・ヘンダーソン画伯の文章と絵が入っていた。鉛筆描きのスケッチは繊細で、彼の手になる動物達は、写真よりはるかに愛らしくて、あどけない優しい顔をしていた。
詩のような説明文はフランス語で書かれていた。父はそれを英語に訳して、ゆっくり読んで聞かせてくれた。
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