ALWAYS ON MY MIND

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途中まではホセが勝っていたけれど、貝のかけらを踏んで、「痛え」と立ち止まったので、私が先に着いた。 浜辺の岩にも波打ち際にも、朝ご飯を探す蟹がびっしり張り付いていた。 この砂浜は、城の敷地内にあるけれど、うちの人たちは誰も、青い葱やガーリックで調理される前の蟹なぞにはいささかの興味もない事を、蟹もそこはよく心得ていて、少しでも姿を見せたが最後、容赦なくつまみあげられて、まずしい野菜がぐたぐた煮えている鍋に、ろくに洗いもせずに放り込まれる、住宅密集地帯の海辺は避けて、毎朝ここへ集まって来ていたから、潮の引いた早朝は斑点のある蟹がいくらでも捕まえられた。 私のゴム草履を生ぬるい海水が濡らしている。海草や芽の出た椰子や、赤いビニール袋が朝の波に揺れていた。ざーっと波の引いた砂浜に、ホセのはだしから流れた血が赤く残っていた。 「ホセ、足をお見せ。潮水で、血が流れてしまうよ」とリタに言われても、ホセは聞かなかった。リタの籠に蟹を投げ込むのに熱中していた。 「ホセ、足、痛くないの?」 ホセは蟹に夢中で返事をしない。     
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