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「二人とも、どこ行ったの」
「知らない」
「いいわ。とにかく、今はパンがいるんだ。二十人分の」
家政婦は、汗をぽたぽた垂らしながら、パンの籠を抱えて、埃っぽい道を急ぐ。どうやら昼食に間に合ってほっとしたところへ、迎えに出した女中がのんびり戻って来る。
「おまえ、どこに行ってたの?」
「パン屋です」
「ネリーはいなかったんだろ、なんですぐ、報告に帰らなかったの」
「・・・・・・・」
「今まで、何してたの」
「村で、友達に会ったから、話をしていた。あそこの羊が盗まれて、犯人はきっと、西の奴で」
「ああ、もういいよ。おまえに頼んだ私が悪いのよ」
お使いに出した方の女中は、さらに遅くなってから、ぶらぶら帰ってくる。家政婦は青筋を立ててどなりつける。
「ネリー、パンは?」
「・・・・・・」
「お金は、どうしたの」
「・・・・・・」
「エプロンのポケットに入れて上げただろう」
「エプロンは、途中で、西の子供に、あげた」
「なんでさ」
「くれ、と言われた」
「エプロンはいいよ、エプロンは。何でお金ごとあげるのさ」
「・・・・・・・」
「それで、おまえは今まで、何してたの」
「・・・・・・」
これはまだましだ。去年パンを買いに出たきり、まだ帰って来ない手合いまである。
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