ALWAYS ON MY MIND

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パエリアにする海老や、ムール貝や、ごそごそ動いているロブスター。生きたラプラプ。輸入品のバタや、ビン詰めのピクルス、オリーブ、ぶどう酒、イギリス紅茶の缶などの、山のような買い物で、家政婦と乳母が抱えている籠はすぐに一杯になった。二人は籠を地面に下ろして汗を拭った。ホセが素早く、籠を両肩に抱え込んだ。 「おばちゃん、俺が運ぶからさ。お駄賃くれよな」 「おまえ、そんなに小さいのに、籠は重いよ」と、叱り飛ばすのかと思った家政婦は、ぶっきらぼうに言った。 「重くても、いいさ」とホセは笑った。 そして私とホセは、仲良しの友達になった。 以来、感謝祭やクリスマス、イースター、ご先祖さまのお墓参りなどで島に戻るのが、私には大きな楽しみになった。 この海域二百マイル四方には学校が全然なかったから、どのご家族も一年の大半はメトロマニラにいて、学校のお休みになるとここへ戻って来る。 私の子供時代の記憶には、メトロマニラの邸よりも、この島の波の音や、スコールの前触れの曇り空色をしたチックチャックが、カピス貝をはめ込んだ窓にぴったり張り付いて、ききききと鳴いていた事や、船着場のまわりに並んでいた露店の、奇態な色をした飲み物を欲しがって、乳母にだだをこねた事の方がずっと鮮やかに残っている。     
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