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アレハンドラ島の北にある細長い岬には、私の先祖が建てたスペイン建築の城が白く高く聳えている。城は、切り立った断崖に建てられた天然の要塞で、海側に砲台が据えられている。旧式な上にも旧式な大砲は、ぎしぎしに錆付いていて、何百年もの潮風が描いた縞模様が浮き出している。この砲台は一度も実践には使われなかったけれど、私たち七人兄弟はみんな、子供の頃はここでよく遊んだ。私は五つの時、この砲台から岩場に落ちて、太ももを十三針縫われた。傷はまだ醜く残っているけれど、あんまり気にしたことはない。
島へ来る女の子達はみんな、両親と乳母の目が行き届いていて、滅多に邸から出なかったし、西側の子供たちと話を交わす事などはまずなかったから、この島の誰も、アレハンドラの娘が、スラムの子供と大の仲良しだなんて、考えもしなかった。アマンダ家政婦の行き届いた采配も、七人兄姉の末っ子の私にまではとても届かなかったから、私はこの島にいる間は、乳母のリタさえ付いている限りまったく何をしようと自由だった。
ホセの家族が住んでいた不法占拠区は、島の西の、船着場の近くにあって、ホセの家の人たちも、そのほかの住人たちもみんな、「西の奴ら」と一まとめに呼ばれていた。身元が不確かなので、住人の屋敷では誰も雇わなかった。で彼らは仕方なく、船着場の回りをうろついては、乗り降りの客の荷物を運んだり、誰も欲しがらない安物のお土産物を無理やり売りつけたり、まだ首も据わらない赤ん坊をだしに物乞いをして、生計を立てていた。
このスラムは、私が乳母車から人生を観察し始めた時にはすでにあったけれど、長兄のダニエルに聞いたところでは、ほんの十年も前のこの島には、よそものはほとんどいなかったらしい。
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