十三日の金曜日のゲイソン

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━━深夜、あなたは震撼する 夜も更け、通りの薄ボンヤリとした証明の光が差された公園の高い位置にある時計の針は、3時を差す間際。 一組のカップルが、誰もいないことをいいことに、プレイを存分に楽しんでいた。 昼間以外は夕方以降、人もあまり訪れないような、住宅から離れた公園。手入れもざっくりしかされていないのか、池の回りは池を隠すほどだった。 その草の中でカップルは、盛大にプレイを繰り返し続けいた。人がいたならば、誰かがAVを大音量で流しているのかと耳を塞ぎたくなるほどに。 二人は自分達しか見えていなかった。 ……だから背後から忍び寄る人影になんて、気がつけるはずがなかった。 朧気な、薄明かりの中での行為に明け暮れていた二人。突然視界が暗くなり、動きが止まる。 火照った体で高揚して快楽に耽っていたためか、反応が遅れた。 最初にそれを見たのは、男に馬乗りになっていた女。みるみる顔が青ざめる。ただ人が来ただけなら、見せつけるくらいの度胸はあっただろう。しかし、彼女が見たものはそんな生易しいものではなかった。 ここは日本。いるはずのない存在がそこにいた。日本人が模している可能性はある。 ━━シュコー……シュコー…… 顔を紐つきマスクできつく縛り、呼吸の音がおかしい。開いた穴から覗く瞳は、常人のそれではなかった。更に、筋肉で固められた体に張り付くような服装。薄明かりの中では、全裸も同じ。隆々とした腕には、大きな斧を掲げた姿はまるで……。 ━━ジェイソン サイコサスペンスさながらの雰囲気にひきつりながら後退する女。 「……え?」 振り向いた全裸の男も固まった。 女は男を置いて立ち上がると、近くにあった自分の服を掴み、よろめきながら一目散に走り出した。 ……しかし、ジェイソンのような男は動かない。じっと残された男を見ていた。凝視された男は、身動きもできず、恐怖で固まったまま。 振り向かずに走り続ける女は、聞きなれた男の叫びを聞いた。それが更に彼女を恐怖に導き、走る速度をあげる。助けることは出来ないし、一緒に死にたくはない。交番にも向かわず、自宅に駆け込む。真夜中だったから、彼女の姿は誰もみることはなかった。
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