僕はどうにかして君といないといけない

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 桃井の一族にはまれに不思議な力を持って生まれてくる者がいた。  先祖である巫女の血が強く出る。先のことがわかるのだ。  ただし、その力を発現するには特殊な状況が必要だった。  なぜか雨に濡れないとだめなのだ。  ただ濡れればいいわけではなくて、天からの恵みの雨でないといけない。 「おっ、学。よかった、その様子だとわかりそうだな」  本殿の中へ入った時には、僕の熱はたぶん四十度は下ってないと感じた。  熱にうかされて具合の悪そうな息子を見て、喜ぶのはうちの父親くらいだろう。  僕は内陣(ないじん)の祭壇前に倒れこんだ。冷たい床板が頬に心地良かった。 「今度の会期内に解散総選挙すべきでしょうか?」  父が質問する。 『……否。大敗する』  僕の口から出ているが、僕の言葉ではない。  遠いご先祖であって、祭ってある巫女様が言っているらしい。僕のような男の場合、(かんなぎ)と言うそうだ。  この神おろしのようなことを始めてわかったのは、大物ほど神様の言うことにすがりつくということだ。口コミでこの神社の存在が伝わっているらしく、大手企業の社長や、はては内閣の与党まで聞きにくるようになった。     
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