僕はどうにかして君といないといけない

3/6

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 もちろん中二の子供が答えているなんて父も相手に明かさない。あくまで仙桃神社に祭られている何ちゃら姫命(ひめのみこと)ということになっている。やる気の無い僕は何ちゃら姫の名前までは覚えていなかった。 「先に秘書の人にお伝えしてくる。そうしたら布団敷いてやるから」  父は拝殿で待つ政治家の秘書に会いに行ったのだろう。  ぼんやりする視界の先にピンクの何かが見えた。倒れた時に鞄が開いて、出てしまったのだろう。使われてないピンクの折りたたみ傘。  なんで雨宮は謝ったのだろう。 『あの女に(とが)があるからだ』  めずらしい。巫女様が質問以外のことに答えた。「とが」って何だ?  まもなくいつものように深い眠りがやってきた。こうして眠った翌朝には嘘みたいに熱も引いて身体が軽くなる。でなきゃ、やってられるか、こんな事。 「雨宮さん、傘ありがとう」  翌日、一人ぽつんと席に着くセーラー服の彼女に傘を返した。雨宮日和はビクリと身体を震わせたが、机の上に置かれた折り畳み傘を鞄にしまう。 「おう。学、やっぱ、昨日雨宮さんと帰ったんだ?」  晴樹が振り返って僕の机に両肘を乗せた。何か勝手な想像でニヤついている。 「田喜野井スポーツ店の場所を教えようとしたんだよ」 「ご、ご、ごめんなさい。昨日は」  顔を上げた雨宮の顔は真っ赤だった。  なんだかわからないけど、その顔はやめて欲しい。晴樹に変な誤解をされる。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加