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今よりたくさん仕事を請けることができれば、そのうち父さんたちだけで神社をやっていけるかもしれない。都会の高校に行くことも許してもらえるかも。
「う、ううっ、う……嬉しい」
自分のことばかり考えていたので、その声で初めて雨宮が泣いているのに気づいた。
振り返ると二、三メートル後ろで両手で顔を拭う雨宮。見ていたら頭に雨粒が当たる。
僕は傘をさして雨宮の方へ戻った。
「田喜野井スポーツ店まで送っていく」
差しかけた傘の下で僕の言葉に顔を上げた雨宮の濡れた目はきれいだった。
「あ****」
雨宮が何か言ったが、聞こえない位大量の雨が落ちてきた。思わず両手で傘を握りしめる。
僕は女を好きになってはいけない。
昔の巫女がそうであったように。
お祖父さんもお祖母さんと結婚したら、神託の力が消えてしまった。
できるだろうか。
でも僕はどうにかして君といないといけない。
好きにならずに君と一緒にいなきゃいけない。
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