君は雨を連れてくる

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 背後からのしかかるようにして挨拶してきたのは一年生の晴樹(はるき)だ。一つ年下だが、子供がとにかく少ないのと小学校の頃からの付き合いで気づけば親友になっていた。  言うまでもないがこの中学はクラスが一つしかなく、現在全校生徒数は十人。教職員と同じ人数になりつつある。今年の三年生が三人卒業するので、そろそろ合併されてもおかしくなかったが、来年には小学校から五人入学してくるので二人増えることになる。僕が言うのも変だが、こういうものは神様が調整している気がしてならない。 「どしたん? 暗い顔して」  晴樹は僕が神社の子で宮司である父の次位にあたる禰宜(ねぎ)であるというのは知っているが、僕の裏の仕事までは知らない。それは父からきつく言い渡されているのもあるが、話したとしても「頭おかしくなったん?」と言われるのがわかりきっているからだ。 「なぁ、なぁ、知ってっか? 転入生が来るんだと」  口の軽そうな兄から聞いたのだろう。晴樹の兄はこの中学の数学教師で、他の教師が四十代や五十代の中、唯一の若者だ。地元愛が強いのか、こんな何も無い田舎で二十代の貴重な時期を過ごしている。     
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