君は雨を連れてくる

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 僕は再来年にはここからなるべく離れた高校へ進学し、そうしたら二度と戻って来ないつもりだ。仕事のことや神社なんて知ったことじゃない。父には申し訳ないが、僕は青春ってやつをこんなところに埋没させたくはないんだ。 「女の子らしい。しかもおまえと同い年だってよ。うひゃ~、楽しみ!」  晴樹は靴にジェットエンジンでも付いているかのように校舎へと走って行った。なんとかして皆より先に転校生を見ようとしているのだろう。  対して僕はそんなことに何の期待も浮かばなかった。  もちろん一年生六人、三年生三人の間に挟まれて妙に浮いていた唯一の二年生であった僕と同じ学年が増えるのは喜ばしいことかもしれない。さらには一年生に一人、三年生に二人という女子の偏った比率が増えるのも、ほかの男子の期待が高まるのも無理無いことだ。 「おはよ、桃井(ももい)くん」  下駄箱で珠子(たまこ)から声をかけられた。珠子は三年生の女子の一人だ。今日も甘ったるい匂いの香水をつけている。 「おはよう。斉藤さん」  僕も普通に第二次性徴期を迎えてはいるので、女子に興味がないと言えば嘘になる。そしてなんとなく珠子が僕を好きなのも気づいてはいる。  だが僕は極力女子に触れてはならないのだった。もちろん何も考えなくて普通に手が触れ合うくらいなら平気だが。 「雨宮日和(あまみや ひより)さんだ」
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