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晴樹の兄、山辺先生が転入生を紹介している間、僕は一人窓の外を見ていた。
ゴロゴロゴロ……
まさかの遠雷まで聞こえてくる。仙桃山の向こう側からだ。
やった。このまま降ってくれることを願う。
暗雲が近づいてくるのを見続けていたせいか、僕の机にぶつかられて、ようやく彼女の存在に気づいた。
「あ、あ、あ……」
僕の横に立ったセーラー服の女子は、何かのホラー映画の幽霊みたいに不気味な唸り声を発していた。長い髪に顔がほとんど隠れていて、小さな顎と震える口元しか見えない。
「ご、ご、ご……」
低い声はますます怨霊感があった。期待を裏切られたのか周囲の男子たちは早くも彼女を透明人間化し始めたようだ。もう彼女のことを見ていなかった。
たぶん「ごめんなさい」と言いたかったのだろうが、その女子は黙って頭を下げると隣の席に弾かれるように座った。今朝運ばれたのか、僕の隣に新しく席が増えていた。僕はそこで初めて黒板に書かれた彼女の名を知った。
黒板から雨宮に視線を移す途中で珠子と目が合う。珠子の目は意地悪く光っていた。心を読めるわけじゃないが、わかりやすい。数少ない女子のナンバー1の座をキープできると安心した顔だ。
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