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「桃井は同じ二年生だから雨宮と仲良くするように。雨宮も知らない土地に来て、いろいろ不安だ。ほかの皆も教えてあげるようにな」
あいかわらず古いドラマのような発言をする先生だ。
このような緊張を通り越して卑屈な感じの転入生は以前にも一度見たことがあった。小学校の時だ。自分のプライドどころか存在意義も打ち崩されて人にどう声をかけたらいいのかわからなくなっている状態。おおかた前の学校で苛められてきたのだろう。
だが、ここに来て何かが解決するわけでもない。
僕らはどっかの青春ドラマのように偽善者でもなく、普通の子供だ。規模が小さいから都会より逆に人間関係は濃いかもしれない。
「では、授業はじめるぞ」
山辺先生が僕たちの机の間を回り始める。授業と言っても塾みたいなもので、各学年ごとに分けられたグループの中で説明する感じだ。
そのあいだ他の学年は自習として前回の復習問題を解く。僕は熱心な母がつけた家庭教師のおかげで、じつは三年生の授業内容もわかっていた。
「嘘だろ、雨降るのか? 傘持ってきてないんだけど」
前の席の晴樹がぼやく通り、雷鳴がだんだん近づいていた。
思ったより焦っていたのか肘で消しゴムをはじいてしまい、下に落ちた。拾おうとかがんで手を伸ばした瞬間、額に強烈な一撃がきた。
「イテッ!」
何が起こったのか把握するのにしばらくかかった。
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