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雨宮が悲痛な声を上げたので、犬の糞でも踏んだのかと思った。
が、次に雨粒が頬を打ったのでわかった。
気がつくと、また辺りが暗くなっていて、空は暗雲に包まれていた。まだ自宅がある山の麓までは200メートルくらいあった。
「あ、あ、あ……ご、ご、ごめんなさい」
雨宮がまた低い怨霊声を出したが、いきなり謝ってきたので、一瞬言葉が遅れた。
「やっぱり、私のせいだ。か、傘、持ってきてる?」
雨宮の悲しげな顔に驚きながら、首を横に振る。
濡れる気満々で来たから、当然持ってきてない。
「こ、これ! ごめんね、さ、さよなら!」
まだ田喜野井スポーツ店の場所を教えてなかったが、雨宮から押し付けられるように手渡されたピンクの折りたたみ傘を見て、顔を上げると、彼女はすでにだいぶ前を走っていた。自分のスポーツバッグで頭を隠しながら。
次の瞬間、ふたたび大雨が降ってきた。
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