僕はどうにかして君といないといけない

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僕はどうにかして君といないといけない

 僕は雨宮から借りた傘を鞄にしまうと、滝のような雨に打たれながら仙桃神社の石段を上っていた。普段なら山門横の母と祖母がいる自宅へ真っ直ぐ帰るのだが、僕は山門をくぐり、本殿へさらに石段を上がっていく。  だんだん熱が上がってくるのがわかる。先日父から言われた政治家の質問を思い出そうとする。  仙桃神社は鎌倉時代から続く由緒ある神社ということになっているが、この過疎地に近いド田舎、氏子や崇敬者(すうけいしゃ)制度もすたれつつあり、数えてないが、参拝者も年間で三桁にも満たないと思う。  ようするに僕の家は金がない。  祖母の代から人を置かなくなった。完全なる家族経営である。  それでいて、本殿に入れるのは父と僕しかいない。信じられない話だが女人禁制の神社なのだ。  その理由は祖母によれば遠い遠い、稲作が始まった時代まで遡るご先祖様の巫女に(いわ)れがあるようなのだが、保管されていた文献がどこかへいってしまったので、詳しいことはわからないらしい。  とにかく、会社だとすれば、ありえない経営状態だったのを支えたのが、祖父の不思議な力であり、現在それを僕も受け継いでいる。     
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