高校都市（仮題）

「赤いビル」

快速は3分遅れで駅に着いた。

まだ物件を探してないから、 今日は駅前のホテルに泊まる。
でも、昼間に 到着してしまったので、チェックインには、まだ早いと思い、私は駅前を散策してみたくなった。

駅前の横断歩道を渡ると、赤いビルが見えた。
私が住んでいた街のジャスコにどことなく似ていた。
しかしその建物は、ジャスコでもイオンでもなかった。
多分、 ４階建てだろう。
看板はもとより、建物を覆うガラスまで、赤い、赤みがかっている。

二つ目の横断歩道を渡って、その赤いビルに入った。
いきなり、マクドナルドの看板が見えた。
といっても、 いわゆる「ミニマック」で、 席が極端に少ない。

ミニマックのはす向かいには、ミスタードーナツがある。
この時間帯だから、おばさま方の井戸端会議の会場になっているだろう、と、思いきや、 セーラー服やブレザーや学ランや白いカッターシャツが目立っている。

そうか。
『高校都市』だからか。
平日の昼間にこんなところに「たむろ」していても、何も咎められない。
そういう風に、この都市、『高校都市』は、できているんだ。

この時間に、若い活気が、ミスタードーナツにあるって、面白いな。

エスカレーターで、2階に上がった。
いきなり、女性用の下着売り場だった。
夏らしい、高校生がつけたら似合うような、さっぱりとした色合いの、水玉模様のブラジャーとショーツが、マネキンを彩っていた。