3・火曜・夕方~水曜・昼

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 顔を上げると、五階のエレベーターホール。 「あれ?」  木下は思わず声を上げた。  辺りを見回せば、明るい日差しに、朝のニュース。それから、事務室へ向かう人の波。 「おはようございます、木下係長。昨日はご馳走様でした?。助かりましたよ」  田中だ。  木下は慌てて、田中を人の群れから、自販機側の空間へ引きずり出した。無理矢理腕を(つか)まれ、急に荒っぽく扱われた田中は、それこそ目を丸くして、木下を見ている。 「係長、どうしたんですか? おかしいですよ?」  田中の言うとおり、木下は興奮していた。ここ数日、疑問に思っていた、そのことがどんどん真実味を帯びてきたからだ。 「田中、昨日、俺はお前と本当に飲みに行ったのか?」  突飛な質問に、田中は目を見張り、眉をへの字にして、 「何言ってるんですか。行きましたよ! 明日に持ち越すと大変だから、この辺でやめましょうって俺が言うまでずっと飲んでましたよ。帰ったのは日付け変わってからで、マンションまで送ってったら、奥さん酷く怒ってましたよ。大変だったんですから。やだなぁ、係長らしくないですよ、記憶がなくなるまで飲むなんて!」     
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