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4・水曜・夕方~木曜・昼
愛子の言葉どおり、ジャケットの内ポケットから区役所の封筒に入った書類が出てきた。
薄い白い紙に、緑色の印刷──左上部に「離婚届」の文字。
突きつけられた現実、だが、実感が湧かない。
(もういちど、何が起きているのか、整理してみよう。俺の周りで、ここ数日起こった出来事を)
残業で一人残った事務室、机に裏の白いコピー用紙を数枚広げ、木下はボールペンで箇条書きにこれまでのことを綴り始めた。
夕焼けがオフィス街のビルに当たり、乱反射して色を強め、強いオレンジ色になって営業一課の事務室を包んでいた。長く伸びた木下の影が、哀愁を漂わせて床に伸びる。冷房を切った室内、全開した窓から生ぬるい風がどっと吹き寄せると、重石の乗った書類の束がカサカサと侘しく音を立てる。
(まず、最初に異変があった、あの日──月曜日だ。俺は間違いなく、エレベーターで一階まで下りたんだ)
カリカリとボールペンの走る音が室内に響く。
(気がつくと、朝になっていた。俺は五階のエレベーターホールにいた)
(その夜、田中と飲みに行くはずだった。でも、俺は行ってない。なのに、二日酔いしていた)
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