4・水曜・夕方~木曜・昼

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(そうだ、エレベーターなんかで下りるからいけないんだ。階段だ、階段を使えばいいじゃないか。そうしたら、あんなことにはならないはずだ……!)  思い立ったら、やらずにはいられない。  木下は机のメモを引き出しにしまい、鍵をかけ、机の上をまっさらにすると、空の弁当箱を持って廊下へ飛び出した。  エレベーター脇の階段を一気に下る。だっだっだっだと、勢いよく、リズムをつけて、下る、下る。 (大丈夫、階段なら、行ける、帰れる)  木下は期待に胸弾ませてどんどん下りた。帰りたい、ただ一心で。  三階……二階……一階……。 (ほら、あとは正面玄関へ──) 「あれ、係長、今日は階段使ったんですか?」  はぁはぁと息を吐く間もなく、田中の声に顔を上げた。  白く優しい日差し。朝のニュース、事務室へ向かう人の波。  木下は、がっくりと膝を落とした。 (また……まただ。帰れなかった)  右手に持っている弁当箱、ひょいと上げると、重かった。 (でも、俺はやっぱり、家に帰っていたのか──?) 「駄目ですよ、階段で来たくらいで息切らしてちゃ。営業は足が勝負、そう言ってたじゃないですか」  にこやかに「それじゃお先に」と事務室へ去っていく田中の背中。  木下は壁を頼ってやっと立ち上がり、いつものように自販機に向かう。珈琲をひとつ。ぐいぐいと飲む。     
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