5・金曜

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5・金曜

 次の日の朝、やはり木下は夜をすっ飛ばして、五階のエレベーターホールへと舞い戻っていた。  キラキラと眩しい朝日は、そんな彼を皮肉って笑っているようだ。出勤する社員、朝のニュース、いつもの光景。  今日は金曜日、家に帰れぬまま、週末を迎えてしまった。  こう何日も続くと、だんだん、諦めに変わってくる。もしかしたら、自分はこのまま、会社から帰ることなど出来ないのではないかと、嫌になるほど思い知らされたからだ。  木下の手には、今日もぎっしり詰まった弁当が引っ提げられていた。どうやら、こんな状況になっても、愛子はいつもと変わらず、弁当を寄越したらしい。まだ、自分に対する愛が残っているのではないのかと、期待してしまう。彼女を離婚まで追い込んでしまったのは、どうやら自分らしいのだが……。  いつもの缶珈琲を買い、いつものように飲み干す。缶を捨てた後、そっと内ポケットに触れると、何かがある。──紙、封筒だ。 (離婚届……?)  なんとしてでも確認せねば。だが、迂闊(うかつ)に見れば、社内中に噂が広まってしまう。  木下は弁当を握り締めたまま、一目散に屋上へ駆け上った。     
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