5・金曜

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「これから仕事だ……、落ち着け、落ち着くんだ……」  木下は、手元の白い紙を、折り目どおりにしっかりと折り直し、封筒に入れて懐にしまった。  まだ、胸は高鳴ったまま。  彼は出来るだけ平静を保ちながら、営業一課へと向かった。事務机に辿り着く頃には、顔の赤みも落ち着き、いつもの木下へと戻っていた。机の上に書類を並べ、今日の営業の準備をする。朝礼、ミーティング。彼は何事もなかったかのように仕事を続ける。  それでも、見ている人はきちんと見ているものだ。 「木下係長、ちょっと、いいか……?」  一課の課長、島田が、木下に声をかけた。丁度、田中と一緒に外回りに行こうと営業鞄を持ち上げた時だ。  木下はそのまま鞄を机の下に置き、島田に呼ばれるままに、一課の応接間へと通された。  一瞬事務室内が騒然とするが、木下の耳にそんな様子は届かない。  六畳ほどの室内に応接セット。島田に(うなが)され、木下はソファーに腰掛けた。 「何か、あったのかね」  島田は太い声で、彼に尋ねた。 「あ、いや、大したことでは……」  木下は恐縮した。     
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