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月曜日の朝、田中が営業一課に出勤すると、課長の島田が不機嫌そうな顔で事務室内をうろうろしていた。木下の机に人だかりが出来ている。なにやら言い合っている。
「どうかしたんですか?」
気の抜けたような声であたりに尋ねると、同僚の女性が答えた。
「木下係長と、連絡が取れないらしいよ。携帯電話も、家の電話も不通らしくて。どうしたのかなぁ」
いつもキッチリ、時間前に到着しているはずの木下が、役職者のミーティングに顔を出さないのは、明らかに不可解だった。島田が朝から数度電話したが、留守で連絡の取りようがないという。無断欠勤するような人間じゃない、だからこそ、彼のことが皆気がかりだった。
田中は、暫く黙りこくっていたが、何かを思い出したように、島田のもとへ駆け寄った。
「課長、課長、ちょっと、いいですか?」
人ごみを掻き分け、島田のスーツの袖を引っ張って、応接間へ引き込み、内鍵を閉める。「田中、どうしたんだ?」との声に耳を貸さず、彼は自分の中に燻っていたものを島田にぶつけた。
「先週もチラッと話しましたけど、係長の様子、おかしかったんです。多分、連絡取れないのはそれが原因ですよ!」
「田中、お前もそう思うか!」
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