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よくよく見てみれば、スーツもしっかり着替えてある。きちんとシワの伸びたワイシャツ、折り目も毎朝の如くピンと張っているスラックス。
どう考えても、一度家に帰ったに違いないようだが、木下には全く覚えがない。
(そういえば、疲労感も少ないし、腹も減ってない。疲れてるのか? 駄目だな……こんなことでは)
木下は勝手に結論付けた。きっと、疲れすぎていて錯覚しているのだと。
気のせいだ、気のせいだ、と繰り返し、木下は自販機に向かう。朝の目覚まし用珈琲を購入し、ぐいぐいとひと飲み。飲み干した缶を暫く無言で見つめ、くずかごへ捨てると、首を捻りながらも事務室へ歩いていった。
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