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重苦しい雨雲が立ち込め、今にも落ちてきそうな空の下で、僕らは授業を受けていた。
窓際の席から外を眺めていると、ぽつり、ぽつり、絹糸のような線が空から降ってきて、すぐに壊れたシャワーのような雨が降り始めた。
教室の中では、傘を持ってきたか、持ってきていないか、そんな会話が繰り返される。
高校生にもなって雨で騒ぐなんて。
どうでもいいことじゃないか、そんなの。
僕は白々しくも冷たい気持ちで、そういうふうに思った。
授業が終わって、慌ただしく帰る生徒や部活へ向かう生徒に別れる。
僕がクツを履いて、折りたたみ傘をカバンから出していると、ふと、それが目に入った。
ガラス張りの玄関口では、ひとりの少女が雨の出元を見上げていた。
「飛行機でも飛んでいるのか?」
僕が聞くと、彼女はむうっと膨れた。
「こんな天気で飛ぶわけないでしょ!」
彼女は僕と小学校からの同級生で、昔はよく遊んだ仲だ。
最近はめっきりだが、これも思春期特有の現象だと思えば、僕らはどうやら順当に育っているように思える。
「あ、傘持ってる!」
「当たり前だろ。今日降水確率八十パーセントだぞ。ニュースくらい見ろ」
「残りのニ十パーセントに賭けたの!」
「降水確率ってそういうのじゃねえよ。っていうか、賭けに負けてんじゃねえか」
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