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それから三日後、また大雨が降った。
夏になるとたびたびこういうことが起きる。
また傘を持ってきていない、学習能力のない連中が騒いでいる。
もう、そんなに騒ぐのなら学校のロッカーにでも入れておけ。
放課後、玄関口にはまたあいつがいた。
「じゃあ、帰ろっか」
「帰ろっかじゃねえよ。お前傘は?」
「ない!」
「なんでないんだよ」
彼女は学習能力のない連中の筆頭だ。
そういえば昔もよく教科書を忘れたり文房具を忘れたりして、僕が貸す羽目になっていた。
何度忘れても改善されないため、僕は貸すように別の鉛筆と消しゴムを用意していたくらいだ。
「……あれ? 今日は折りたたみじゃないんだね」
「あれ、強い雨じゃあんまり役に立たなかったろ」
つい三日前、小さすぎて頭くらいしか守れず、結局ずぶぬれになって帰ったことを思い出す。
「……で、まだ傘に入れるとは言っていないが」
「ごめん、お願いします! 今日もお母さんいないの!」
こいつ、傘を忘れた時の対処を僕で済まそうとしている。
本当のところを言えば、職員室で傘を借りることもできる。
しかし彼女の場合、借りた傘を無くす、盗まれるところが容易に想像できるし、たった一度の借用のために弁償することになるのは、あまりにも間抜けで、とても見ていられない。
僕のそういった気持ちを利用するような形で、彼女はまた、僕の傘下へと入り、悠々とファミレスまでの道を歩いたのだ。
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