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「ねぇ、どうしたの・・・?」
不意に頭上から聞こえた声に、女はビクリと顔を上げた。
いつの間にいたのか、赤い車に乗った女性が女を見下ろしている。
車の音などしたろうか・・・と女が困惑していると、女性は助手席の扉を開けフェイスタオルを寄越した。
「困ってるなら一緒にいこう」
女は迷ったが、相手も女性だし襲われる心配はない。物盗りにしても無一文な自分なら大丈夫だと、有難く同乗することにした。
女性はやたら大人しかった。走り出してからもシンとした空気が辛い。
女は自分一人で喋っていた。ナンパされて付き合った男とドライブしていて置き去りにされたこと。今まで車が通りかからず困っていたこと。
女性は少し微笑んだ表情で、女の怒りや愚痴を淡々と聞いてくれていた。
最初こそ女性の静かさに居心地の悪さを感じていた女も、何を言っても優しく受け入れてくれる女性に心を許し始めた。
「あたし次は口の上手い男はやめる。お姉さんみたいに話聞いてくれる男見つけるよ」
あの野郎、絶対バッグは取り返してやるんだから。
息を巻く女に女性はやっと口を開いた。
「ねぇ、この林道を走ってると、不思議な観光バスに遭遇する事があるのよ」
女性の方から声をかけてくれたのが嬉しく、女は身を乗り出した。
「へぇ、どんなバスなの?」
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