津島さんと僕

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「おはようございます、新原先輩」 当たり前のように玄関の外にその少女は居た。 「おはよう、津島さん」 ちょっとストーカー染みているこの少女は、文芸部の後輩の津島さんだ。 「行こうか」 何だかんだ津島さんと登校することに慣れてしまっている僕は、毒されている。 「はい」 嬉しそうなその声を聞きつつ、僕は彼女と出会った日に思いを馳せた。 クラブオリエンテーションのあった春のある日。 ノックもせずに部室の扉を開けた少女が居た。 神経質そうな、長い黒髪の少女は、息を切らせ、大事そうに新入生歓迎用の部誌を胸に抱いていた。 「あの、この話を書いた人って誰ですか?」 開いたページに載っていたのは、僕の書いた小説。 「僕だけど……」 そう答えると、少女は僕の前に来て言ったのだ。 「生まれる前からあなたのファンでした」 今思えば相当電波な発言だが、嬉しそうに笑うその姿を微笑ましく思ってしまった。 多分その時に僕は絆されたのだろう。 だからこそ、このちょっと危ない感じの後輩を拒絶しないのだと思う。
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