4人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「どうかしましたか?」
何時もと変わらない通学路。
物思いに耽って黙りこんでしまった僕を、津島さんは心配そうに見つめてくる。
男女の体格差故、意図せず上目遣いになる津島さんは可愛い。
「何でもないよ、ごめんね」
謝ると津島さんは慌てた様子で手を振った。
「気になさらないで下さい!」
この従順な後輩は、僕が言えば、一緒に睡眠薬を飲んで死んでくれそうだ。
――いけない、いけない。前世に引き摺られている。
前世の記憶を持つ僕は、虚無的な性質を少なからず引き継いでいる。
その影響で神経衰弱気味で、死にたがる傾向にある。
一人で死にたい僕が、津島さんを道連れにしようか、と考えてしまうのには、理由がある。
彼女の性質もまた僕に似ているのだ。
日直の仕事でゴミ捨てに行った放課後。
ベタな展開だが、体育館裏で告白されている津島さんを見つけた。
どう返答するのか気になって覗き見をしていた僕は、度肝を抜かれた。
「ごめんなさい。私と心中する覚悟がない人と付き合う気はないの」
その言葉を聞いた瞬間、悟った。
この子もまた死にたがっている、と。
僕の場合は一人だが、この子の場合は誰かと死にたいのだ。
何となく、この子を死なせてはいけない、と僕は感じたからこそ、放っておけないのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!