津島さんと僕

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「どうかしましたか?」 何時もと変わらない通学路。 物思いに耽って黙りこんでしまった僕を、津島さんは心配そうに見つめてくる。 男女の体格差故、意図せず上目遣いになる津島さんは可愛い。 「何でもないよ、ごめんね」 謝ると津島さんは慌てた様子で手を振った。 「気になさらないで下さい!」 この従順な後輩は、僕が言えば、一緒に睡眠薬を飲んで死んでくれそうだ。 ――いけない、いけない。前世に引き摺られている。 前世の記憶を持つ僕は、虚無的な性質を少なからず引き継いでいる。 その影響で神経衰弱気味で、死にたがる傾向にある。 一人で死にたい僕が、津島さんを道連れにしようか、と考えてしまうのには、理由がある。 彼女の性質もまた僕に似ているのだ。  日直の仕事でゴミ捨てに行った放課後。 ベタな展開だが、体育館裏で告白されている津島さんを見つけた。 どう返答するのか気になって覗き見をしていた僕は、度肝を抜かれた。 「ごめんなさい。私と心中する覚悟がない人と付き合う気はないの」 その言葉を聞いた瞬間、悟った。 この子もまた死にたがっている、と。 僕の場合は一人だが、この子の場合は誰かと死にたいのだ。 何となく、この子を死なせてはいけない、と僕は感じたからこそ、放っておけないのかもしれない。
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