0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ユイは?」
私が聞くと、彼らは顔をそむけた。
訝しみながら中へ入ると、ひとりの女性が私に駆け寄ってきて、ハグをした。
「久しぶり! 会いたかったよ!」
「え、あ、うええ?」
抱きしめられながら、彼女が誰だったか必死に思い出そうとする。
しかし、まったく記憶にない。
先に中に入っていたもうひとりの友達が、私の肩を叩く。
「愛花、そいつユイだよ」
「はあ!?」
「驚いた? 成長したでしょ」
ユイはいたずらに笑ってみせた。
一言で言うなら、とんでもない美人だ。
栗色の長い髪、くりくりとした大きな目、くっきりとした鼻筋。
シャープなアゴと、そこから続く細い首と、くぼんだ鎖骨。
薄い生地のブラウスと、ピンクのスカート。
どこをとっても、私の知るユイの要素がない。
「何があったの!?」
混乱しながら私が言うと、ユイは頬を膨らませた。
「ねえみんな同じリアクションするの酷くない!?」
「え、いや、だって、ユイ、男じゃ……」
「愛花も!? あのね! あなたたち私がオカマになったとか、手術をしたとか言ってるけど、私最初から女なんだけど!?」
「え、じゃあ、中学の制服は?」
「おさがりだったの! うちお金ないから学校に言って、学ラン許可してもらったの!」
そんな、女性だったなんて。
だったら、私の初恋はどうなったの?
ジュースの間接キスにドキドキした、あの時の思いは?
宙ぶらりんとした気持ちを胸に抱えながら、私はもう一度ユイを見る。
「……いや、アリかな」
私が呟くと、ユイは少し不思議そうな顔をしてこっちを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!