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トイレ魔人、現わる!
「ゼェゼェ……。た、助かった」
間一髪で破滅の危機を脱した将太は腰掛けた便座の上でホッと息をつきました。
レバーを回して轟々と流れる水の音が耳に心地よく響きます。
「入学早々お腹を壊すとは参ったぜ……。それにしても今日何かヘンなもん食ったっけ?」
安心すると、そんな疑問が心に浮かびました。
「まぁいい、詮索は後にしよう。とにかく用を足したら保健室に行ってアリバイ作らないと……」
ブツブツ独り言を呟きながら将太はトイレットペーパーに手を伸ばそうとして……思わず凍りつきました。
ない! ないのです! トイレットペーパーが!
壁に備え付けられたホルダーに、トイレットペーパーの姿はどこにもなく、ロールの芯の両端を掛ける三角形のフックがただむなしく虚空を支えていました。
慌てて周囲を見回しますが、予備のトイレットペーパーは影も形も見当たりません。
将太は、思わず呻きました。
「嘘だろ……」
まさに絶体絶命。便座の上に座り込んだまま将太は頭を抱えました。
「あああああ何てこった……」
将太が途方にくれたとき、ふいにドアを隔てたトイレの外からフッフッフッフッ……という不気味な笑い声が聞こえてきました。
「だ、誰かそこにいるのか!?」
「フフフ……1年B組、風間将太。緑ヶ丘高校1年校舎のトイレへようこそ」
トイレの入口に立っていた声の主はコツコツコツ……と靴音を立てて歩み寄ると、将太のいる個室の扉の前で立ち止まりました。
「誰だ、お前は!?」
「フフフ……オレ様は、お前を地獄から迎えに来た悪魔の使いだ」
「悪魔の使いだと? 」
「オレ様のことはトイレの魔人とでも呼んでもらおうか、クックックッ」
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