3人が本棚に入れています
本棚に追加
トイレ魔人の罠
(なんだコイツ、電波の入った厨二病のイカれぽんちか? )
トイレの中でドン引きした将太でしたが、魔人の次の言葉に思わず色めき立ちました。
「風間将太、授業中に不意に襲い掛かった下痢を巧みに隠蔽しつつ教室を抜け出し、間一髪トイレに間に合って良かったな。だが、今、何かお困りではないかな?」
「何っ?」
「そこにトイレットペーパーはおありかな? クックックッ……」
「き、貴様……さては前もって隠しておいたな! 」
「クックックッ、飛んで火にいる夏の虫とはまさにお前のことよ」
「おい、悪ふざけはよせッ! トイレットペーパーを寄越すんだ!」
「断る」
「何っ!?」
「紙がなくては動けまい。その状態であと19分が経過すればどうなると思う」
将太はハッとしました。
「授業が終わる。そうなったら……」
「トイレに来た他の生徒どもにお前の醜態は知れ渡るだろう。そのブザマな話はたちまち校内に広がり、お前は『紙に見捨てられた哀れな男』と後ろ指を指され暗闇に彩られた不遇な高校生活を送ることになるだろう、クックックッ……アーハハハハハハ!」
「うわああああああああああ!」
将太は、嘲るように哄笑を続ける戸外の男に「助けてくれっ!」と泣きつきました。
「まぁ落ち着け。貴様が破滅を迎えるまでまだ19分の猶予がある。その間にオレからひとつ話をしてやろう」
「話?」
「まずは種明かしをしてやる。お前の腹痛だがな、フフフ……昼休みの間に貴様の机の中に入っていたクッキーがその仕掛けだったのだ」
「何ぃ!?」
将太は思い出しました。
学生食堂で昼休みを過ごし、教室に戻ってみると自分の机の中にかわいらしいリボンでラッピングされたクッキーの小さな包みが置いてあったのです。
包みを解くと美味しそうなクッキーと『風間くんへ、生菓子なので今すぐ食べて下さい』と書かれたカードが出てきました。将太は(もしかして俺のことを好きな女の子がこのクラスにいるのかな?)とニヤけ顔でクッキーを口に放り込んだのでした。
それが、まさか罠だったとは……将太は唇を噛み締めました。
「貴様……何の為にそんな卑怯な真似を!」
「おっと、オレ様にそんな生意気な口が利けるのか? お前を破滅から救うトイレットペーパーは今、オレ様の手にあるのだがな」
「お、おのれ……」
最初のコメントを投稿しよう!