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トイレ魔人の逆ギレ
「ま、待てよ。そりゃいい加減なのは悪かったけどさ、手紙にはこれは罰ゲームで出した奴だから本気にしないでねってちゃんと書いて謝ったよ。そこまで怒ることないだろ? それに、せっかく高校生になったんだから出来たら彼氏彼女の一人ぐらいやっぱり欲しいじゃないか。フラれたところで、それも青春の蹉跌のひとつってことで」
怒号を浴びた将太は平均的な高校生の一般論で反論しましたが、ドアの向こうに立った謎の人物は怯むけぶりすらありません。
「ホザけ小僧! 世の中にはな、ちょっとした不注意が巡り巡ってトンでもない大惨事になってしまうことがあるのだ。貴様、将来サウジアラビアでタバコをポイ捨てして油田を燃やすようなことにでもなったらどうする? そしてそれが地球温暖化に拍車を掛け、世界を滅亡させる結果へと続いたら……。うむ、やはり未来に禍根を生む災いの芽は早いうちに摘み取っておかねばならん」
「おい、勝手に一人で納得してるんじゃねえ。オレが涼美ヶ原さんにフラれたところでクラスの笑い者になるだけの話だろ。それがなんで世界が滅亡する未来に飛躍するんだ」
強引な理論展開に思わず反発した将太でしたが、魔人は逆ギレのように吼えました。
「ええい、黙れ黙れっ! お前の軽はずみな行動は、お前の知らないところでこの高校内の人間関係に亀裂をもたらしかねんのだ。断じて看過出来ん。そこでだ、お前の出したラブレターはオレ様の手で揉み消し工作をさせてもらった!」
「ええっ! でもどうやって? 」
「フフフ……実はオレ様がお前に成り代わって手紙を書いておいたのだ。『僕は実は夢遊病で、授業中居眠りしている間に勝手に君に手紙を書いて出しました、すみません。今度グーで殴って下さい』という文面でな」
「人を勝手に夢遊病なんかにすんなよ! しょっぱい言い訳までしやがって」
「罰ゲームで軽薄なラブレターなど書きおるハナタレ小僧が偉そうに抜かすでないわ! むぅ、反省する様子もないようなら、やはりトイレットペーパーのお慈悲など貴様に必要ないということだな!」
「うわぁいけねぇ、忘れてた!」
将太は真っ青になりました。
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