トイレ魔人の怒号、三回目(笑)

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トイレ魔人の怒号、三回目(笑)

魔人は一方的に話を進めてゆきます。 「さて風間将太。この緑ヶ丘高校の入学試験の日のことを思い出してみるがいい」 「うん?」 「貴様はあの日試験に遅れそうだったらしいな」 「あ、ああ。実は緊張してさっきみたいにお腹を壊してな、家を出るのがすっかり遅れてタクシーを拾って何とか間に合った。だがそれがどうかしたのか?」 まだ中学生だった貴様がタクシーとは何様だ! と、怒号を覚悟した将太でしたが、意外にも魔人は穏やかに尋ねました。 「そのときお前は、同じように試験に遅れそうだった女生徒を助けてやったそうだな」 「ああ、そういえば……」 将太は思い出しました。 あのとき、タクシーの後部座席でソワソワしていた彼は、道路脇の歩道を泣きながら歩いている中学生らしい女の子を見つけ、もしやと思ってタクシーを止めさせたのです。 『あのさぁ! もしかして緑ヶ丘高校の試験を受けに行くの?』 タクシーのウィンドウを下げて大声で呼びかけると、女の子は涙を袖で拭って頷きました。 『じゃあ、急いで乗って! 多分まだ間に合うよ!』 将太はタクシーのドアを開けさせると女の子を手招きして乗せたのです。 そして…… 「うん、確かにそんなことがあった。あの娘、タクシーの中でガクガク震えていたから見かねて自分のお守りまであげたっけなぁ」 「それからどうした」 「時間ギリギリでタクシーが間に合って、そのまま試験会場へ走って席に着いたよ」 「娘はどうした」 「どうって……名前は知らないし、合格したかも分からないからそれっきり……」 言い終わらないうちに 「たわけーー!!」 と、雷鳴にも似た怒号が三たびトイレの中に響き渡りました。 「愚かなり、風間将太! どこまで愚かなのだ貴様は! それほどの恩を受けた娘だぞ。貴様の好意を無駄にしまいと試験に必死に挑み、合格したと想像出来ただろうが!」 「ま、待てよ。普通そこまで想像出来ねえってば! そりゃ、せっかく間に合ったからお互い合格出来たらいいなーぐらいは思ったけどさ……」
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