『祖父の死と、俺のあれこれ』

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『祖父の死と、俺のあれこれ』

 祖父が死んだ。89歳だったそうだ。  長寿大国日本においては、もう少し長く生きていてもいいような気もするが、まぁ若くして……とは言われない、いい年齢だろう。  死因は病気でも何でもなく老衰だったそうだ。  傍に就いて、ずっと看病をしていた母曰く、苦しむこともなく、安らかに逝ったらしい。不謹慎かもしれないが、苦しむことなく死んでいった祖父は幸運じゃないかと思う。  独居老人で助ける人が居らずに孤独死だとか、痴呆が進んでいつの間にか行方不明、癌に侵されて最期の最期まで苦しみ続けて死んでいくような人達がいる中で、老衰という死に方は一番いい死に方だと思う。  死に際は見れなかった。それどころか、葬儀にも行けなかった。  間の悪いことに、最近入社した新人の教育を任されていた事、同僚が急に退職した事。兎に角色々な事が重なってしまって、葬儀に行けるような状態じゃなかった。  薄情者だとか言われそうだが、実際そんなもんじゃないだろうか。  身内が死んだとなって、涙が零れる範囲ってのは結構狭いように思う。  ……俺は、両親が死んだら、涙が零れるだろうか。零すことができるだろうか? 正直少し不安だ。     
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