何時だって

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「真瀬君に付きまとうの、やめてくれない?」 人目につかないところで話したいの、と連れて来られた空き教室で、言われた。 「あなたには関係ないでしょう?」 我ながら驚く程に冷たい声が出た。 「当事者の真幸が言うのなら、分かります。けれど、無関係なあなたに言われる筋合いはありません」 穏便に済ませたかったが、やはり真幸関連だと、私には無理だったようだ。 「真幸君、嫌がっているじゃない。そんなことも分からないの?」 真幸の性格上、嫌がっているならはっきり言うはずだ。 「分かりませんね」 真幸と付き合いの長い私以上に真幸のことなんて知るはずないくせに。 「話はそれだけですよね?」 もう何も言うことはない。 真幸のことを一番よく知っているのは私なのだから。 「ちょ、ちょっと」 引き止める声を無視する。 これ以上は時間の無駄でしかない。 「そうやって人の話を聞かないから、あなたは駄目なのよ!」 一体私の何を知っているというのか。 「だから、あなたの母親は――」 フラッシュバックした。 差し出された手を振り払う私。 悲しそうなお母さんの顔。 私の名前を呼ぶお母さんの声。 ブレーキ音。 救急車のサイレン。 気が付くと、目の前の女をはたいていた。 ぽかんとした表情を見て、少し冷静になる。 「人の家庭事情に口を挟まないでもらえますか?」 襟元を掴んで言い放った。 怯えたような顔で何度も頷くのを見届けて、立ち去った。
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