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すくわれる
「あらあら、またお会いしましたね。貴方様とは、一度きりだと思っていたのですよ。驚きを隠せません。そうは見えないと言われましても、私の表情が乏しいのは前々からでして。表情筋が上手く働かない性質でして。如何お過ごしでしたか？ 何だか少し大人びたように見えるのですが。おやおや、それは大変でしたね。逆に清々した？ 貴方様も複雑な家庭環境のようですね。近々遠い親戚の元へ引っ越す、と。そうですか。それは寂しくなりま……せんね。いえいえ、違います。何処かへ行ってしまえ、ってことでは。待って下さい。その、私は一人が好きなのですよ。きっと貴方様もでしょう？ 同じ匂いがしますもの。だからこそ、私は――。いえ、何でもありません。それでは、餞の言葉に代えて、貴方様のためにかたりましょうか」
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