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「ソノ メダマハ オレノカ? 」
「何か」が俺の耳元で囁いた言葉を聞いて俺は意識を失った。
「おい、佐藤!起きろ、大丈夫か?」
よく朝、酷く魘されてる俺を心配した仲間が体を激しく揺さぶり起こしてくれた。
「どうした?」
「いや、何でもない。怖い夢見てただけ。」
俺は怖くて言えなかったよ。
まだどこかで「何か」が聞いているんじゃないか、って思えて。
「そうか。何か変な事言ってからな。」
「なんて?」
「その目玉は俺のか?って、ずっと繰り返してたから気味悪いと思ってさ。朝マズメ狙いの奴らもう出たぞ。どーする?」
俺はまた怖くなって部屋に残り、行かなかった連中と飯を食うことにした。
窓から射し込む朝日に照らされて、落ち着きを取り戻してくるとあれは本当にただの夢だったんじゃないかと思われてきた。
恐い話を聞いて、その話が夢になったそれだけの事だから、もう気にするのはやめにしよう。
そこそこ遊んだ帰りの車中は、 殆どが疲れて眠っていた。
運転手の俺は皆いい気なもんだな、と運転に集中。
すると、突然聞こえてきた言葉・・・
「ソノ メダマ ハ オレノカ?」
俺はルームミラーを見た。
寝ていた筈の鈴木さんが目を見開いている。
「今、なんて?」
「良かったですね、先輩。連れて行かれなくて・・・。」
彼女が何故その事を知っていた?たまたま仲間から話を聞いたのか?
俺は恐ろしくてそれ以上聞けなかったし、あの日以来鈴木さんとは顔を合わせる事もなかった。
後で聞いた話では、どうやら、家庭の事情で離れた実家へ帰ったらしい。
アレは何だったのか、夢だったのか、それとも現実だったのか、今となっては曖昧でよくわからない。
でも最近のニュースで知ったが、あの海で水難事故があったらしい。
直ぐに見つかったが、何故か死体には目玉が無かったそうだ。
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