6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……さっきも言ったよ。あきちゃん、昔はオレよりも小さくてさ、オレがあの人の後ろ姿を追ってる間、お前はオレと肩を並べようと必死だったのに……今ではオレがあきちゃんの隣に並ぶのに必死になってる。見下ろせていたはずのあきちゃんの顔が、今ではオレを見下ろしていて……容易く頭を撫でることすら叶わなくなっただからかな、大きく……成長したんだなぁって思ってさ」
ゆっくりとタオルケットから顔を出し、翔吾は体の向きを変えようと動き出す。正面を向きたそうにしている翔吾の意思を汲み取り、章人は抱き締めていた力を静かに抜いていった。そして身動きが取れるようになった翔吾は向き直り、章人の目の前で微笑んだ。
その優しい微笑みに再び強く抱き締めたくなってしまう。
「でもね、オレ……身長が抜かされたのは悔しいけど、昔と変わらずあきちゃんがオレの傍にいてくれてるのがすごく嬉しいんだ」
普段にも増して翔吾の声は穏やかで耳にすんなりと馴染んでいく。何のトゲもない、彼が感じている悔しささえもが愛おしい。
「……しょうちゃん……」
「だからかな? なんか……あきちゃんを……責めたくなっちゃったんだよね。たまにはオレが、お前より小さかったとしても……ヤれるんだって思いたくて」
最初のコメントを投稿しよう!