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「俺を嫌いって言ったこと」
「…………、どーしよっかなあ」
「じゃあ自腹でよろ」
「あー待った待った、取り消す! 私は洲くんが大好き! ね!」
そう口走ったところで、奈子の動きが止まる。いつしか雨はやんでいた。目の前には照れたようにうつむく洲。やがて彼が口を開く。
「そういうとこだよ、奈子」
「うっ……うるさい!」
思わずそうこたえたところで、洲が
「ん」
と手を差し出した。
「いくよ、家」
「……はーい」
どうやら先程のもので良かったようだ。奈子は洲の差し出された手をにぎる。
「手、つめたい」
「さっき髪をかきあげたから」
「うん。なんかお風呂上がりみたい」
「…………もうやめてしゃべらないで。しゃべったら罰金」
「ええええ!? なんでよお!」
そんな会話をしつつ、水たまりも踏みながら二人は洲の家へと向かい歩き出した。
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