雨音ステップ

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白いシールのようなものがはってある。 「……はがしちゃえ」 パーマをくせっ毛だとからかった洲への腹いせとでもいわんはわかりに、奈子はシールを剥がす。思ったより簡単にとれたシールの下にあったのは、予想もしていないことだった。 「……“奈子が俺を好きになりますように”……?」 声に出して読むと理解度も急速に増すもので、奈子の体温は急上昇した。そして、思い当たる。  二年前の今頃、あるジンクスが流行っていると噂があった。身近なもの、消しゴムでもノートでもそれこそ手帳の裏表紙でもよくて、そこに願い事を書いて叶うまで隠すというなんとも子供じみたものだった。 「……え、でも、洲くんは確か……」 ――何それ? あほらし。 噂のことを話した奈子に対して、あっさりとそう切り捨てていた。彼女もそうだよね、と同調しすっかり忘れていたのだ。
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