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「おい」
「え、わあっ!」
取っ手を見ていると低い声で話しかけられ、振り返ろうとすると傘を奪われた。洲が傘を取り上げ、閉じる。先程より弱まった雨が二人を打ちつける。
「みた?」
「えっと……」
「みたの?」
「…………う、うん」
びしょ濡れになりながら、奈子は頷く。服がじっとりと肌にまとわりつく。洲も頭からズボンまで濡れていて、前髪が彼の表情を隠すようにたれていた。
「なんではがすの」
「……気になったし」
「…………なんでさっさと帰らねえんだよお前は」
怒っているのかと思いきや、どちらかといえば呆れた様子で洲が前髪をかきあげた。
彼の端正な顔立ちが雨に濡れているからかより一層際立っている。
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