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「……うち、来いよ」
「……………洲くんの?」
「濡れてんじゃん」
「洲くんが傘を取るからでしょ!」
「お袋もいるから、服かしてもらえよ」
もっともなことを奈子がいえば、洲は自分の服の裾を絞りそれを無視するかのように続けた。が、奈子の方を見れば彼女の目に涙がたまっていた。雨にまぎれて、奈子の頬を伝う。
「奈子」
洲が奈子に手を差し出すが、彼女はその手から逃れるようにはたいた。
「バカ、ほんとバカ、嫌い!」
「奈子!」
「美容院帰りに土砂降りにあってパーマが台無しとかほんとありえないから! お金かけたのに! うっ……、うぇええぇえええん!!」
「奈子、悪かったってば!」
慌てて洲が止めようとするも、奈子は泣くのをやめようとしない。
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