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「やべぇよな、この(つら)」 「きしょいよね。こんなの居ても仕方ないでしょ」 大学の写真部で、年一回の学校内コンクールに出展する写真を撮るべく、木下 健(きのした たける)達は動物園に来ていた。そこの小動物のコーナーにある、ハダカデバネズミを見ていた小嶋 春香(こじま はるか)と、彼女と同じ学部の松本 優希(まつもと ゆうき)はそう言うと、足早にそこを出ていった。健がゆっくりそこを出ようとすると、じっとハダカデバネズミを見つめる女の人が居た。ふわりとして下の方に少し柄のある長袖のシャツを着て、その下に黒いスパッツを穿いた肩甲骨くらいの黒髪を一つに束ねたその女は、少ししてこちらを向くと、すぐにガラスの奥に目線を戻した。 「好きなの?それ」 「えぇ。私と同じだから……」 「同じ?」 健はガラスの奥のハダカデバネズミを見ながらその女の隣に立ち、聞いた。すると、その女は笑って答えた。 「さっきも、春香達が言ってたでしょ。きしょい、面がやばいって。私もよく、同じ様な事言われるから」 そう言って笑ってこちらを見た女の顔は、目が細く、鼻と口が大きい。写真部一、いや学年、学校一のブスと言われている、深山 美華(みやま みか)だった。
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