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美華は続けた。 「この子達は、女王と子ども達を生かすために必死で生きてる。私には、子どもも旦那さんもできるか分からないけど……誰かのために生きていたいって思うの。って、無理だけどね」 そう笑って写真を撮らずに去ろうとする美華の横で、健はガラスの横の看板を見ながら言った。 「ハダカデバネズミって、癌に強いんだってよ。それで医療関係の人達が研究してるんだってよ」 「そうなの?」 美華は健の横に来て、それを見た。 「ほんとだ」 「こいつらにはこいつらの魅力があるってことだな」 「そうかもね」 そう笑うと、美華はすぐに言った。 「木下君。あんまり私と一緒にいると、勘違いされちゃうよ。同学年しかいないから特に……付き合ってる、とかさ」 「へぇ」 健が気の無い返事をすると、美華は怒ったように言った。 「変な噂がたっちゃってもいいの? それとも、私をからかってるの?」 健は看板を見たまま言った。 「毎月の合評会で、俺が好きな写真の撮影者が毎回同じなんだ。それで、その人から見た世界はどんな風に見えるんだろうって、気になってた」 「へぇ」 「深山美華。同じ三年で、学部は違うけど、同じ棟によく居るブス」 「フフフッ。ごめんね、可愛い子じゃなくて」 そう言って下を向いて笑う美華を見て、健は言った。 「何で謝るんだよ。俺が勝手に惚れただけなのに……あっ」 健は頭を掻きながら、そっぽを見て恥ずかしさを紛らわした。美華は笑って言った。 「フフフッ。ありがとう、私の写真をそんなに好きでいてくれて」 「バカ。写真、もだけど……深山のこと、もっと知りたい。今度の休みに、飯でも行かね? 二人で……」 健がそう言うと、美華は少し戸惑った様に笑って答えた。 「女の子ってのは、お花だって前に春香が言ってたでしょ? 私は春香達みたいな、綺麗な花じゃない。私はその横の雑草ってとこかな。ねっ? こんなのと一緒にいても、何の自慢にもならないよ」 「自慢するために付き合うわけじゃねぇだろ。少なくとも俺は、好きな人と一緒にいるために付き合うもんだと思ってる」 「そっか。でも、花じゃないよ。雑草だよ?ブタクサとか、ヨモギとか……」 「深山は、桔梗だろ」 と健は、動物園の入り口で見つけて撮った、桔梗の写真を渡した。それを受け取った美華は、笑って言った。
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