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黒の国
「お母さん、まだ眠たくないよー!」
あらあら…
「じゃあ、この世界の話を少ししましょうね。さぁ、ベッドにお入り」
「はやく!はやく!」
「はいはい」
この世界は何個の国で出来てる?
「…んー、ごこ!」
そうね。赤、青、緑、ピンク、黄色ね。
でも、本当は6個なのよ。
黒い国があるわ。
「でも、大人たちは皆無いって言ってたよ!」
そうよ。子供が行ったら帰ってこられなくなるから、皆隠したがるの。
あなたも、行かないようにね?
「行き方なんてわからないよ!」
ふふ、そうね。私も分からないわ。
でも、そうかもと思っても絶対に行かない事。いいわね?絶対よ。
「もう分かったよ!早く続き!」
はいはい。
黒の国の黒の城にも、私達のように、お姫様がいるの。
「へぇー!そうなんだ!」
そのお姫様はあなたみたいに、じっとしてられない、おっちょこちょいな女の子でね、
いつもどうやって城から出ようか、毎日試行錯誤していてね…
「ぼくじっとしてられるよ!
ねぇ、お母さん、しこうさくごって何?」
少し難しすぎたかもね。ずーっとどうやったら出られるか、考えていたの。
「へぇー!」
それは、いつも成功していたし、いつも失敗していたわ。
「どう言うこと?」
お城からは出られたの。でも、蒼の森で必ず捕まってしまうの。
「誰に?」
さぁ、そこまではお母さんも分からないわ。
「蒼の森に行けば、黒の国に行けるの?」
そうね。そう思って行った人たちは何人もいたわ。でも、皆帰らぬ人となってしまった。
……一人だけ
一人だけ、帰ってきた男の子がいるわ。けれども、この男の子は記憶を無くしていたわ。森に入った後の記憶を。
「ええー!かわいそう!…あ!
お姫様はどうしてお城から逃げようとしていたの?」
分からないわ。ごめんなさいね。これくらいしかお母さんも分からない。これでこのお話はおしまい。
この話をしたことは、パパには内緒にしてね。約束よ。
「ねぇお母さん、もう眠たい」
あらあら…おやすみ、私の愛しい坊や。
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