再会、そして再失

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「痛ってて」 「お前…」 「何~?ヨル、話しかけないで助けてよ」 あれ、返事がない。 あれ?今さっきの声って全然ヨルの声じゃ… 「ここで何してる」 顔を上げると、黒い髪に蒼い目のした男の子がいた。 チサトside 着地に失敗した人間を助けに行こうと落ちた場所へ降下していくと、女の子がいた。 茶パツで金色の目をした娘で、不思議と目を惹かれる雰囲気をしていた。…が、 さっき爺ちゃんのふりをした奴と似ている雰囲気を帯びていた。 しかも、厳重な結界を無視して難なく入ってくる奴を放っておく訳には行かない。 …青の国の名誉にかけて、捕まえるべきか… 「もぅ、誰でも良いから助けてよって感じよね!」 意外に明るく振る舞われて、少し躊躇する。 「お前、名前は?」 と、訊ねる。しかし、 「名前は聞くより自分から言うものでしょ」 と、答える気がない。まぁ、ごもっともだが。 「俺はチサト。青の国の第五王子。で、お前名前は?」 「チサト…ね。私はアイリ。黒の国の王女。いや、黒の国から逃げてきた、逃亡者って感じかな。よろしく」 そう言って黒い手袋を外して握手を求めてくる。 待てよ… 「アイリ?」 「そうよ。どうかしたの?」 待てよ待てよ。聞いたことがある。 忘れていたものを思い出すかのように… 「黒の国第二王女、Grim reaper AIRI か?」 まさか、そんなはず… 「そう!私ってそんな有名?何で本名を知ってるの?」 知ってるも何も… 俺が守りきれなかった、女の子の名前だ。 確かに、昔会ったときよりも、アイリも俺も成長しているけど、何も変わってない。 「俺だよ俺、チサト!昔ここで会ったことがある…」 「うーん」 彼女は覚えていないようだ。 あぁ、そうか。俺も術で記憶を消されていたのか。なら、これだけのキッカケがあって解けない術とは、もう少し高いレベルの魔法しかない。どうにかして思い出させたい。 …と言うことで、 もう少し大きなキッカケを作りたい。でも、 これと言って何もないので、前と同じように川で遊んだり、リフリアやこの森の生き物を教えたりしていた。 「何か思い出したか?」 「うーん」 相変わらず曖昧な返事は変わらない。 「もう少しで俺と爺ちゃんの秘密基地があるから、そこで休もうか」 その瞬間だった。俺も一瞬だけ感じ取った魔力。アイリのものだとおもって、気にしないでいたけど、アイリの様子がおかしい。 「君っ、走って逃げて!」 「俺にはチサトって言う名前が…」 「早く!」 そう言ってあの娘は俺の手を引く。 あれ、この感じ…前にも、 「見つけましたよ」 優しく、包容力のある声が、威圧を放ちながら、ゆっくり、ゆっくりと近づく。 あぁ、爺ちゃん。俺はまた、大切なものを二度も失うかもしれない。
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